特集 前部ぶどう膜炎アップデート
4 サイトメガロウイルス虹彩炎
八幡 信代
1
1九州大学大学院医学研究院眼病態イメージング講座
キーワード:
サイトメガロウイルス
,
虹彩炎
Keyword:
サイトメガロウイルス
,
虹彩炎
pp.435-439
発行日 2023年5月5日
Published Date 2023/5/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003125
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サイトメガロウイルスはヘルペスウイルスのひとつで,初期感染後生涯潜伏感染する1)。本邦を含めアジアの潜伏感染率は80~90%と,欧米(50%前後)と比べて高いことが知られている2)。これまで,免疫正常者ではサイトメガロウイルスは非顕在性の活性化を起こすのみであり,後天性免疫不全症候群や造血幹細胞移植後など高度の免疫能低下状態においてのみサイトメガロウイルス網膜炎などのサイトメガロウイルス感染症を起こすと考えられてきた。しかし,明らかな全身性免疫能低下のない患者にサイトメガロウイルス虹彩炎やサイトメガロウイルス角膜内皮炎が起こることが2008年にそれぞれシンガポールと日本から報告され,サイトメガロウイルスによる新たな疾患概念となった3)4)。近年の眼内液網羅的PCR(polymerase chain reaction)検査の普及により,アジア地域では虹彩炎の眼内液からサイトメガロウイルスDNAが検出される症例が急増し,2016年の本邦のぶどう膜炎全国調査では,前部ぶどう膜炎の原因ウイルスとして,サイトメガロウイルスが水痘帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスを抜いて1位となった5) 6)。一方,欧米ではサイトメガロウイルスの報告は少ない。本稿では,サイトメガロウイルス虹彩炎について最近のトピックスとともに概説する。
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