私の経験
初診時に広範な脈絡膜剥離がみられた小児急性リンパ性白血病の1例
高橋 宏典
1
,
坂本 晋一
1
,
高山 卓也
1
,
粕谷 友香
1
,
新井 悠介
1
,
牧野 伸二
1
,
蕪城 俊克
1
1自治医科大学眼科学講座
キーワード:
急性リンパ性白血病
,
脈絡膜剥離
,
硝子体出血
,
硝子体手術
Keyword:
急性リンパ性白血病
,
脈絡膜剥離
,
硝子体出血
,
硝子体手術
pp.643-647
発行日 2025年7月5日
Published Date 2025/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004220
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広範な脈絡膜剥離がみられた急性リンパ性白血病の1例を経験したので報告する。症例は5歳男児。紫斑,リンパ節腫脹,採血で白血病が疑われ,当院小児科を紹介受診した。T細胞性急性リンパ性白血病の診断で化学療法が開始され,頭部画像検査で大脳,小脳の多発性出血と右眼硝子体出血が疑われたため,当科に紹介された。鎮静下のため視力は測定できなかった。右眼は鼻側から視神経乳頭を覆う脈絡膜剥離があり,耳側からの脈絡膜剥離と接する広範なもので,網膜前出血も伴っていた。左眼は耳上側に3乳頭径大の網膜内および網膜下出血があり,後極部には網膜前出血がみられた。化学療法による全身状態の改善を待って手術加療を検討する方針とした。右眼は硝子体出血をきたし,眼底透見不能となった。その後,脈絡膜剥離は徐々に軽快したが,硝子体出血の吸収はみられず,初診から9か月後に硝子体手術を行った。術中,後部硝子体剥離は生じており,広範囲な網膜萎縮が観察された。現在,視力は右眼手動弁,左眼1.2である。脈絡膜剥離がみられた急性リンパ性白血病の報告は極めてまれである。白血病による眼底出血に対する硝子体手術の時期に関しては議論があるが,本症例のように重篤な視力障害をきたす場合があることを考慮する必要があると考えられた。

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