私の経験
対側の脈絡膜剥離をきたした海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の1例
中島 温代
1
,
井上 可奈英
1
,
坂井 翔太
1,2
,
末森 晋典
1
,
望月 清文
1,2
,
澤田 元史
3
1松波総合病院眼科(岐阜県)
2岐阜大学医学部附属病院眼科
3松波総合病院脳神経外科
キーワード:
海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻
,
両側眼瞼下垂
,
脈絡膜剥離
,
cavernous sinus dural arteriovenous fistulas
,
bilateral ptosis
,
choroidal detachment
Keyword:
海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻
,
両側眼瞼下垂
,
脈絡膜剥離
,
cavernous sinus dural arteriovenous fistulas
,
bilateral ptosis
,
choroidal detachment
pp.455-459
発行日 2025年5月5日
Published Date 2025/5/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004151
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海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(cavernous sinus dural arteriovenous fistulas:CS-dAVF)は特徴的な結膜血管の拡張を認め,眼球運動障害や眼瞼下垂,網膜静脈閉塞症といったさまざまな臨床像をきたす。今回我々は,両眼の眼瞼下垂,結膜浮腫および左側の脈絡膜剥離をきたした右CS-dAVFの症例を経験したので報告する。患者は80歳女性。右眼瞼下垂・耳鳴りを主訴に近医眼科から当院耳鼻科へ紹介され,頭部CTを撮像するも異常なく経過観察となった。しかし症状は軽快せず,前医より今回は当科に紹介となった。初診時矯正視力は右0.4,左0.5。眼圧は右39mmHg,左30mmHgで,限界フリッカ値は両眼軽度低下し,Hertel眼球突出検査では右14mm,左15mmであった。全方向性の眼球運動障害,両側結膜浮腫と眼瞼下垂がみられ,眼底検査では左眼に出血がみられた。頭部MRIでは両側外眼筋と結合織の腫大,両上眼静脈の拡張を認め脳神経外科に紹介となった。右CS-dAVFと診断されカテーテルによるコイル塞栓術が予定されたが,術前の脳血管造影検査でそのCS-dAVFを認めず,左側のAV shunt flowも軽度で,両側ともに下錐体静脈洞の開存は確認できず塞栓術は中止された。一方で結膜浮腫,眼球運動障害および脈絡膜剥離は消失し,矯正視力右0.7,左0.5,眼圧右14mmHg,左16mmHgと改善した。その後,再発なく現在経過観察中である。今回の経験から,両眼に症状を呈する片側CS-dAVFが存在することに留意する必要があると考えられた。

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