症例報告
多汗症治療薬グリコピロニウムトシル酸塩水和物使用に関連した片眼性瞳孔散大の1例
平山 勝大
1
,
岸川 泰宏
1
,
大石 明生
2
1独立行政法人 地域医療機能推進機構 諫早総合病院眼科(長崎県)
2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学分野
キーワード:
グリコピロニウムトシル酸塩水和物
,
抗コリン作用
,
片眼性瞳孔散大
,
多汗症治療薬
Keyword:
グリコピロニウムトシル酸塩水和物
,
抗コリン作用
,
片眼性瞳孔散大
,
多汗症治療薬
pp.593-598
発行日 2024年6月5日
Published Date 2024/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003661
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多汗症治療薬としてのグリコピロニウムトシル酸塩水和物(GT)使用が原因と考えられた片眼性瞳孔散大の1例を経験したため報告する。患者は14歳女性,朝通学時に左眼の羞明感を自覚し,その後37.9℃の発熱,養護教諭に左眼の瞳孔散大を指摘され近医小児科を受診した。同日,頭部精査目的に当院(諫早総合病院)小児科へ紹介となり,神経学的異常,頭部画像検査(MRI/MRA)および血液検査で異常がなく,眼科紹介となった。受診時の体温は37.0℃と解熱傾向でCOVID-19検査は実施されなかった。初診時の視力は両眼矯正1.2,前眼部・中間透光体・眼底に異常は認めず,眼瞼下垂,眼球運動障害もみられなかった。瞳孔不同があり,瞳孔径は明室で右眼3mm,左眼5mm,暗室で右5.5mm,左6mmと左眼の瞳孔散大を認めた。対光反射は左眼で直接・間接ともに著明に減弱していた。輻湊時の対光近見反射解離も認めなかった。瞳孔緊張症も疑われピロカルピン0.125%を5分間隔で2回点眼し45分後に明らかな縮瞳は認めず,膝蓋腱反射も正常であった。ウイルス感染も疑われたが,血液検査では梅毒,単純ヘルペス,帯状疱疹ウイルスも検出されなかった。問診において顔面の発汗予防に多汗症治療薬のGTを腋窩に塗布していることがわかり,受診前夜も入浴後に使用していた。翌朝より左眼に羞明感を自覚,発熱したという経緯から,薬剤が付着した手で眼を触れたかあるいは薬剤の揮発や飛散による左眼片眼性瞳孔散大が最も疑われた。GTの使用を中止し,6日後の再診時に左眼の縮瞳を確認した。瞳孔散大症例に遭遇した場合,GTを含めた薬剤性副作用を考慮した問診が必要であると考えられた。
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