症例報告
小児にみられた鈍的外傷後の黄斑円孔網膜剥離の1例
松本 大蔵
1
,
新井 悠介
1
,
中島 幸彦
1
,
橋本 悠人
1
,
長岡 広祐
1
,
坂本 晋一
1
,
牧野 伸二
1
,
川島 秀俊
1
1自治医科大学眼科学講座
キーワード:
外傷性黄斑円孔
,
網膜剥離
,
小児
Keyword:
外傷性黄斑円孔
,
網膜剥離
,
小児
pp.599-603
発行日 2024年6月5日
Published Date 2024/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003662
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小児にみられた鈍的外傷後の黄斑円孔網膜剥離を経験したので報告する。症例は13歳男子。左眼にサッカーボールが当たり,黄斑円孔網膜剥離を認めたため,受傷翌日に当科を受診した。視力は右(1.2×−9.50D cyl−0.75D Ax15°),左(0.03×−7.00D cyl−1.00D Ax60°),左眼の眼軸長は27.03mmで,後部ぶどう腫はなかった。左眼眼底は上方と後極部に網膜振盪があり,黄斑部に約60μmの黄斑円孔と周囲に網膜剥離がみられた。2週間経過観察したが,黄斑円孔,網膜剥離とも改善はなかったため,水晶体温存硝子体手術(内境界膜剥離併用)を施行した。術中,後部硝子体剥離が生じていたことが確認された。術後6日の光干渉断層計検査で黄斑円孔はわずかに開存していたものの網膜下液は減少していた。術後2か月,黄斑円孔の閉鎖と下液の消失が確認され,視力は(0.2)に改善した。小児で鈍的外傷後に黄斑円孔網膜剥離が生じることは極めてまれで,本症例は強度近視のため硝子体が液化し,外傷の衝撃により黄斑部網膜が遠心方向に牽引されて円孔が生じ,さらに後部硝子体剥離が同時に起こって前後方向への牽引も生じたため,後部ぶどう腫を伴わずに黄斑円孔網膜剥離を合併したと考えた。また,外傷性黄斑円孔網膜剥離では受傷後2~3週で所見の改善がなければ,手術を考えることも選択肢になると思われた。
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