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Acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis(ASPPC)は黄斑部に黄白色病巣をきたす,梅毒性ぶどう膜炎に起こる比較的まれな病型である。今回,我々は左右差のあるASPPC の眼血流変化を観察できた1 例を経験したので報告する。
39 歳男性。両眼視力低下を主訴に受診した。初診時視力は右矯正0.02,左矯正0.5 であった。右眼に黄斑部を中心とした黄白色病変がみられた。スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)ではellipsoid zone(EZ)と外境界膜の消失,網膜色素上皮の不整を認めた。採血で梅毒とHIV が陽性であった。臨床所見・経過よりASPPC と診断した。ASPPCに対しペニシリンG 点滴療法を2 週間行った。治療開始2 週間後,視力は右0.15,左0.7と軽度改善,SD-OCT では右眼EZ は不鮮明であるが外境界膜が描出され,左眼EZ は描出された。治療開始16 か月後,視力右1.0,左1.2,SD-OCT では両眼ともにEZ が良好に描出されていた。Laser speckle flowgraphy(LSFG)による脈絡膜血流測定結果は,治療前の血流値mean blur rate(MBR)は右2.3,左8.8,治療2 週間後で右3.1,左6.8,16 か月後で右6.8,左11.4 であった。
脈絡膜血流の低下をきたし,治療により血流の改善を認めたASPPC の1 例を経験した。重症眼の脈絡膜血流が低値であることは,炎症による脈絡膜循環障害が一因と考えられているASPPC の重症度と脈絡膜循環との関係を示唆するものと考えられる。今後,梅毒患者の増加に伴い,ASPPC の増加も懸念される。非侵襲的な検査であるLSFG がその病態解明の一助となればと考える。
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