特集 梅毒の眼合併症
3 梅毒性網膜炎・ぶどう膜炎
川本 沙織
1
,
原田 陽介
1
1広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学
キーワード:
梅毒
,
網膜炎
,
ぶどう膜炎
,
syphilis
,
駆梅療法
,
性感染症
Keyword:
梅毒
,
網膜炎
,
ぶどう膜炎
,
syphilis
,
駆梅療法
,
性感染症
pp.523-531
発行日 2023年6月5日
Published Date 2023/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003154
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梅毒はTreponema pallidumによる性感染症である。正常粘膜から局所組織に侵入,血液やリンパ系を介して伝播し,さまざまな全身症状を引き起こす。ペニシリンによる駆梅療法の普及後,世界的に梅毒感染者数は激減したが,途上国では依然として蔓延しており,先進国でも男性間性交渉者を中心に各地で再流行を繰り返している。アメリカでは2001年以来ほぼ毎年梅毒の感染者が増加しており,2020年の報告数は2016年から52%増加した。男性間性交渉者の割合が最も高いことは変わりないが,同期間の女性の感染者数は147%の増加と急激である1)。欧州でも2010年から2017年にかけて感染者数は増加を続けており,特に男性間性交渉者の報告が急激に増えている2)。日本では2012年から感染者数が加速度的に増加しており3),国立感染症研究所による速報では,2022年の累計感染者数は1万2千人を突破した4)。この劇的な上昇は,異性間での性交渉による男性・女性の梅毒感染に関連しており,2016年にはこれらの症例数はいずれも同性間性交渉をする男性の感染者数を上回っている3)。これは日本に特有の現象であり,同性間性交渉,風俗利用といった典型的な病歴のない患者でも積極的に梅毒を疑う必要がある。2016年の全国の大学病院におけるぶどう膜炎初診患者の疫学調査では,梅毒性ぶどう膜炎はぶどう膜炎全体の0.5%とまれではあるが5),感染者数の増加に伴って,今後梅毒性眼疾患(眼梅毒)の診療機会は増加することが予想される。
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