私の経験
角膜上皮障害眼での角膜知覚と角膜輪部メラノサイトの検討
田中 公子
1,2
,
岡田 由香
2
,
高田 幸尚
2
,
山口 雄大
2
,
雑賀 司珠也
2
1南和歌山医療センター眼科(田辺市)
2和歌山県立医科大学眼科学教室
キーワード:
神経麻痺性角膜症
,
角膜知覚
,
メラノサイト
,
neurotrophic keratitis
,
corneal sensation
,
melanocyte
Keyword:
神経麻痺性角膜症
,
角膜知覚
,
メラノサイト
,
neurotrophic keratitis
,
corneal sensation
,
melanocyte
pp.89-96
発行日 2022年1月5日
Published Date 2022/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002464
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遷延性角膜上皮障害を起こした症例で,神経障害の有無,角膜輪部メラノサイトに関して詳細に検討した。
症例1は77歳女性。脳腫瘍術後。左角膜上皮障害。右角膜知覚55mm,左角膜知覚40mmと左は軽度の角膜知覚の低下を認めた。症例2は68歳女性。脳腫瘍術後。右角膜上皮剥離を認め,経過中に虹彩炎を合併した。右角膜知覚45mm,左角膜知覚60mmと右角膜知覚の低下を認めた。症例3は69歳男性。糖尿病,胃癌術後抗がん剤服用。両角膜障害。右角膜知覚10mm,左角膜知覚は測定不能と角膜知覚の低下を認めた。症例4は65歳女性。骨髄移植後。両角膜上皮障害,糸状角膜炎。右角膜知覚45mm,左角膜知覚35mmと角膜知覚の低下を認めた。症例5は41歳女性。原因不明の右角膜上皮障害。右角膜知覚45mm,左角膜知覚50mmと軽度の右角膜知覚の低下を認めた。症例6は78歳女性。脳腫瘍術後の顔面神経麻痺による兎眼。右角膜知覚55mm,左角膜知覚50mmと角膜知覚の低下は認めなかった。症例1,2,5で健眼あるいは症状の軽いほうの眼と比較して,患眼で角膜輪部メラノサイトの減少を認めた。症例3,4では両眼全周でメラノサイトを観察できなかった。症例6では健眼と患眼で角膜輪部メラノサイトの差を認めなかった。
原因疾患にかかわらず,角膜知覚の低下による神経麻痺性角膜症では角膜輪部メラノサイトが減少していた。メラノサイトの減少が,神経麻痺性角膜症の診断に有用である可能性がある。一方,それが神経麻痺性角膜症の治癒過程で消費され減少しているのか,または神経麻痺性角膜症に起因して減少しているのかの検討が必要である。
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