症例報告
抗VEGF薬硝子体内注射後MRSE眼内炎の1例
渡部 恵
1
,
日景 史人
1
,
太田 千秋
1
,
伊藤 格
1
,
井田 洋輔
1
,
大黒 浩
1
1札幌医科大学眼科学教室
キーワード:
加齢黄斑変性症
,
硝子体内注射
,
眼内炎
,
age-related macular degeneration
,
intravitreal injection
,
endophthalmitis
Keyword:
加齢黄斑変性症
,
硝子体内注射
,
眼内炎
,
age-related macular degeneration
,
intravitreal injection
,
endophthalmitis
pp.583-588
発行日 2021年6月5日
Published Date 2021/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002162
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加齢黄斑変性症(AMD)に対する治療として近年,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射が広く行われているが,重篤な合併症として感染性眼内炎がある。今回メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)による硝子体内注射後眼内炎を経験したので報告する。症例は59歳男性。3年ほど前から右眼AMDの診断で前医において抗VEGF薬硝子体内注射が行われていた。23回目の硝子体内注射後3日目より右眼痛,充血,霧視を認めた。注射後5日目に近医を受診し細菌性眼内炎を疑われたため当院へ紹介となり,同日硝子体手術および水晶体再建術(眼内レンズは未挿入)を施行した。硝子体の培養検査によりMRSEが検出された。術後右矯正視力は(0.7)で推移し,眼内炎は沈静化したものの術後39日目に網膜剥離を発症したため再度硝子体手術を施行した。再手術後3か月目の時点で網膜の復位は得られているがシリコーンオイルタンポナーデ下で矯正視力(0.07)である。感染性眼内炎は硝子体内注射の合併症としてまれではあるが,視機能予後不良な重篤な合併症である。AMDに対する抗VEGF薬硝子体内注射は複数回を長期にわたって施行することが多く,抗菌薬点眼を投与する場合には耐性菌への対策も検討すべきである。
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