綜説
涙嚢炎と間違えられやすい涙嚢腫瘍
辻 英貴
1
1がん研究会有明病院眼科(東京都江東区)
キーワード:
涙嚢悪性腫瘍
,
涙嚢悪性リンパ腫
,
涙嚢炎
,
PANDO
,
涙嚢病変の診断
Keyword:
涙嚢悪性腫瘍
,
涙嚢悪性リンパ腫
,
涙嚢炎
,
PANDO
,
涙嚢病変の診断
pp.371-375
発行日 2020年4月5日
Published Date 2020/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001623
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涙嚢にも腫瘍ができると言うと,「そこは管腔ではないですか?」とびっくりされることがある。涙道にも上皮はあって,その最大組織である涙嚢の上皮下にもリンパ装置が存在し,リンパ系の腫瘍がそこから生じ得る。涙嚢部に膨らみを生じた場合にはそのほとんどが涙嚢炎であるが,まれではあるものの涙嚢にも腫瘍は生じ,腫瘍の存在により涙道閉塞を起こして慢性涙道炎を生じることもある。ある例では涙嚢炎と思い込み,涙嚢洗浄を繰り返し,時にはヌンチャク型シリコーンチューブを留置し,その後になって腫瘍と判明するという症例も見受けられる。また「慢性涙嚢炎」の診断で涙嚢鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)を施行され,涙嚢を開けたら腫瘍が出てきて専門医に紹介となる例もある。涙嚢腫瘍はまれであるが,いったん腫瘍が生じると,悪性の割合が他部位よりも高いという特徴がある。本稿では,涙嚢腫瘍について,涙嚢炎との鑑別を軸に,その臨床的特徴を中心に述べていくこととする。
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