原著
顕微鏡的多発血管炎に合併した虚血性視神経症の1例
中村 奈津子
1,2
,
篠田 啓
1,3
,
松本 惣一
1,3,4
,
大出 尚郎
5,6
,
溝田 淳
1
1帝京大学医学部眼科学講座
2東京大学医学部眼科学教室
3埼玉医科大学医学部眼科学教室
4松本眼科(阿波市)
5幕張おおで眼科(千葉市)
6慶應義塾大学医学部眼科学教室
キーワード:
microscopic polyangiitis
,
ischemic optic neuropathy
,
photopic negative response
,
網膜電図
,
視覚誘発電位
Keyword:
microscopic polyangiitis
,
ischemic optic neuropathy
,
photopic negative response
,
網膜電図
,
視覚誘発電位
pp.1609-1616
発行日 2018年12月5日
Published Date 2018/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000981
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はじめに
顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)に合併して両眼の虚血性視神経症を発症した1例を報告する。
症例
63歳女性。40歳時にMPAと診断されステロイドおよび免疫抑制剤で治療した。49歳時に再燃し同様の治療を実施した。その後もmyeloperoxidase-ANCA高値が続いていたが全身症状は安定しステロイド内服を継続していた。63歳時に近医で両眼白内障手術を受けたところ視力は右眼(1.2),左眼(1.0p)に改善したが,2か月後に左眼視力(0.7)に低下し中心暗点を認め,当院紹介となった。左眼に相対的瞳孔求心路障害を認め,視力は右眼(1.2),左眼(0.4)であった。Goldmann視野検査では左眼に中心暗点を,Humphrey視野検査では両眼とも感度が低下していた。前眼部・中間透光体に異常なく,後眼部は右眼は正常,左眼は視神経乳頭の耳側が軽度蒼白であった。OCTにおいて乳頭周囲網膜神経線維層厚は左眼は一部が菲薄化,黄斑部神経節細胞複合体厚も左眼は菲薄化していた。全視野ERGは両眼ともphotopic negative response (PhNR)の振幅が低下していた。pattern VEPでは右眼は潜時延長,左眼はnon recordableであった。
結論
詳細な発症時期は不明だが左眼だけではなく右眼にも虚血性視神経症を発症していたと考えられ,診断にPhNRとVEPが有用であった。MPAに合併する虚血性視神経症は発症から長期経過し全身症状が安定していても生じる可能性がある。
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