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原発開放隅角緑内障を無治療で経過観察すると11〜27%の症例の少なくとも1 眼が失明する。一方,閉塞隅角緑内障の場合は33〜75%が失明する。このことから閉塞隅角緑内障は開放隅角緑内障より失明に至りやすい病型であることがわかる1)。そのため閉塞隅角緑内障に対する適切な治療が重要といえる。原発閉塞隅角緑内障の隅角閉塞機序として,①相対的瞳孔ブロック,②プラトー虹彩形状,③水晶体因子,④毛様体因子の4つがあると考えられている1)。相対的瞳孔ブロックは虹彩─水晶体間の房水の流れが妨げられて後房に房水が貯留し,虹彩が前方に膨隆する状態である。プラトー虹彩形状は虹彩根部が前方に屈曲するために,虹彩根部が線維柱帯を閉塞して眼圧が上昇する。加齢や白内障の進行で水晶体が厚みを増すこと,あるいはチン小帯の脆弱性のために水晶体が前方に変位することなど,水晶体の形態や位置異常を原因として眼圧が上昇することを水晶体因子による閉塞隅角緑内障と考える。毛様体と硝子体および水晶体カプセルが微妙に絡み合って,後房から前房への房水の流れが妨げられることがある。房水が後房から前房に流れずに硝子体腔のほうに流れるために,虹彩が後方から押されて浅前房になる。この機序を毛様体因子と呼ぶ。悪性緑内障あるいはmisdirection syndrome とも呼ばれる。いずれの眼圧上昇機序であっても形態的な異常が閉塞隅角緑内障の原因となっているため,閉塞隅角緑内障の治療は形態の異常を正すことにある。薬物で形態の異常を正常化することは不可能であるため手術的治療が第1 選択とされる。慢性閉塞隅角緑内障をピロカルピンで治療してもその47%は眼圧が上昇し,7%に緑内障発作を生じる2)。薬物による治療は手術前に少しでも眼圧を下げる,あるいは手術後に残った高眼圧に対して使われるべきである。隅角閉塞機序ごとに正しい術式を適応し,最小限の侵襲で最大の効果を上げることが重要である。しかし,いまだにエビデンスが不足しているために確たる治療方針が統一できていない。本稿では混迷の中における統一へ向けた動きを捉えたい。
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