症例
毛孔性紅色粃糠疹との鑑別を要した乾癬性紅皮症の1例
松岡 潤子
1
,
大迫 順子
,
鶴田 大輔
,
兼藤 紀美子
1石切生喜病院 皮膚科
キーワード:
Etretinate
,
鑑別診断
,
多剤併用療法
,
経口投与
,
経皮投与
,
粃糠疹-毛孔性紅色
,
Maxacalcitol
,
Betamethasone Butyrate Propionate
,
紅皮症-乾癬性
Keyword:
Administration, Oral
,
Administration, Cutaneous
,
Drug Therapy, Combination
,
Diagnosis, Differential
,
Etretinate
,
Pityriasis Rubra Pilaris
,
Maxacalcitol
pp.568-571
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.18888/J01266.2016280958
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症例は56歳男性で、数年間より尋常性乾癬の診断によりベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩軟膏外用とプレドニゾロン(PSL)5mg/日内服による治療を受けていた。3ヵ月前に全身に皮疹が拡大し、PSL 10mg/日に増量したが悪化した。顔面を含むほぼ全身に粃糠様鱗屑を伴う紅斑がみられ、大部分が癒合し、紅皮症の状態であった。腋窩、肘窩、膝窩には対称性にわずかに島状の正常部位が残存していた。足底には軽度の角質肥厚と紅斑を認め、爪甲は粗ぞうで一部剥離がみられた。病理組織学的所見で、上腕の紅斑については、表皮は過角化と不全角化を伴い、不規則に肥厚し、角層内にごくわずかに好中球が認められ、拡大した毛孔開口部に角栓の形成がみられた。正角化と不全角化が水平および垂直方向に交互に配列している部分もみられた。真皮表層の血管周囲には軽度のリンパ球浸潤を認めた。ごく少数の好中球は角層内にみられたことより、組織学的には乾癬を完全に否定できなかったが、その他の病理所見、臨床像より毛孔性紅色粃糠疹が一層疑わしいと考えられた。エトレチナート40mg内服、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用を開始し、PSL内服は漸減中止した。1ヵ月後に紅斑は全体的に消退傾向で落屑も殆どみられなかった。エトレチナートを減量し、マキサカルシトール軟膏に変更した。半年後の再診で、頸部、体幹には落屑を伴う小紅斑が散在し、肘部には角化性紅斑を認めた。生検を施行し臨床像、組織像より尋常性乾癬と診断した。エトレチナート20mg/内服、マキサカルシトール外用で経過良好である。
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