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症例1:55歳男。トラックの多重事故で運転席に挟まれ、受傷した。尿道からの出血がみられ、背部に波動を触知し、広範囲の軟部組織損傷が疑われた。画像所見にて右気胸、部分不安定型骨盤輪骨折、腹膜内膀胱損傷、左下腿開放骨折を認めた。胸腔ドレーンを挿入した後、緊急で膀胱修復術、骨盤の創外固定術、下腿の創処置と創外固定術を施行した。血管造影にて右閉鎖動脈からの漏出を認め、両側内腸骨動脈を塞栓した。受傷後3日目に背部の皮下血腫のドレナージを施行したが、背部の皮膚が壊死してきたため、受傷後3週目に再度手術を行ったところ、両側大臀筋と中臀筋全体の壊死を認めた。壊死した筋肉を切除し、創を開放したまま手術を終了した。創は約1年で治癒したが、左下肢痛と左腓骨神経領域の知覚低下が残存し、排便障害・排尿障害などを伴いADLの低下を認めた。症例2:64歳男。トラックに衝突され受傷した。左臀部に開放創を認めた。画像所見にて不安定型骨盤輪骨折(仙骨骨折)を認め、尿路造影検査にて造影剤の漏出を認めた。骨盤骨折に伴う出血性ショックと診断し、骨盤創外固定を行ったが、循環動態が不安定であったため、血管造影を施行した。左外側仙骨動脈、左腸腰動脈および左第2~4腰動脈に造影剤の血管外漏出を認めたため、両側内腸骨動脈と左第2~4腰動脈を塞栓した。受傷2週間後に骨盤骨折に対して、手術を施行したところ、左の大臀筋と中臀筋の一部が壊死していたため、壊死組織をdebridementし、骨折部をプレートで固定し、創を開放したまま手術を終了した。術後MRSA感染を認め、再度debridementを行った。受傷後6ヵ月、創は治癒したが、骨折部は偽関節となり左下肢全体の知覚障害と筋力低下があり、歩行器歩行訓練中であった。また、排便障害・勃起障害を認め、尿道損傷には膀胱瘻を留置した。
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