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私の整形外科診療のコツ(第2回) 肩腱板断裂 肩関節鏡視下手術におけるコツ
菅谷 啓之
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1紺整会船橋整形外科病院 スポーツ医学・関節センター
キーワード:
肩関節
,
関節鏡法
,
全身麻酔
,
縫合法
,
手術時体位
,
肩腱板損傷
Keyword:
Rotator Cuff Injuries
,
Anesthesia, General
,
Arthroscopy
,
Shoulder Joint
,
Suture Techniques
pp.742-746
発行日 2019年7月19日
Published Date 2019/7/19
DOI https://doi.org/10.18885/J00282.2019311553
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はじめに
中高年の肩痛と機能障害をきたす代表的疾患として肩腱板断裂が挙げられるが, 腱板断裂は全例手術が必要となるわけではない。無症候性腱板断裂も多く存在し, 有症候性でも保存療法がよく奏効する。保存療法としては,炎症性疼痛を除去あ るいは軽減させることと,肩甲胸郭機能の修正を図ることが大切である。腱板断 裂手術成功の鍵は,手術の出来栄えもさることながら,実は手術適応と手術のタ イミングにある。手術適応を考えるうえでの原則は,外傷歴が明らかでない場合は, 画像診断で断裂の大きさや矢状断面での広がりをみるだけでなく,MRI矢状断像内 側の肩甲骨がY字に見える部分の画像で,筋萎縮の度合いをみて断裂の慢性度を把 握しておく。そのうえで,炎症性疼痛のコントロールと肩甲胸郭機能の修正を試 みる。炎症性疼痛が軽減もしくは消失し,肩甲帯機能の改善がみられても,イン ピンジメントなどの引っかかり症状や特定の肢位での脱力が残存する場合が,手 術をするタイミングである。ただし,外傷性の新鮮断裂で断裂サイズが大きな場 合は,迅速に手術を行う必要がある。特に,比較的若い男性で腱板筋ボリューム が大きいと,数カ月経過しただけで解剖学的修復が非常に困難になる場合がある ので注意を要する。 本稿では,典型的な腱板中断裂の手術について述べる。
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