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はじめに
内反足治療の記述は,紀元前4世紀に遡る医聖 ヒポクラテスによるものが最古で,以後さまざま な変遷を経て現在に至っている。彼は生後できる だけ早期からバンデージを使用した矯正を実践し ており,現代にも通ずる知識をもち合わせていた。 しかしながら,その後の中世欧州大陸では長い年 月いささかの発展もみられず,内反足治療におい ても「暗黒時代」であった。やがて19世紀半ばごろ よりギプス固定法が開発され,次いで麻酔学の発 展,X線の普及,Esmarch法による無血野の確保 が可能になったことで第一期手術矯正全盛期が到 来した。この時期には手術による完璧な変形矯正 を目指すあまり,足根骨の医原性変形や成長障害 を生じさせ,保存療法への回帰を促す結果となっ た。 Kite1)は20世紀半ばに緩徐矯正とギプス固定法を 提唱し,同法は近年まで標準的な保存療法として 受け入れられてきた。一方でTurco2)は1971年に後 内方解離術を報告し,第二期手術矯正全盛期が到 来した。しかしKiteの保存療法は矯正まで数年か かることもしばしばあり,結果として70%程度で 手術が必要であったこと,また手術をすればした で広範囲軟部組織解離後の距骨壊死など,硬くて 筋力の弱い足を作る元凶であるとする報告が1990 年代前半に多数散見されるようになった。 そのような閉塞感のなか,1995年にCooperら3) は,初期矯正による成績良好例が90%を占め,長 期フォローでも80%の好成績を得られるとした治 療法を紹介した。この治療法こそがPonseti法で ある。諸家らの追試においても,初期矯正成功率 がほとんどの報告で90%を超え,きわめて優れた 矯正手技と考えられ4)~ 8),現在では内反足治療の gold standardと位置付けられている。本稿では, 同法の治療体系を紹介するとともに,再発例,難 治例への対応にも言及する。
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