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はじめに
脊柱変形には,椎体骨折や椎間板変性,体幹伸 展筋力の低下などさまざまな要因が関与している が,変形の発症や進行のメカニズムについては不 明な点が多い。脊柱後弯患者では体幹伸展筋力が 低下しており1)〜4),体幹の筋力増強が脊柱後弯や 椎体骨折発生率を減少させる5)。このように,体 幹筋力の影響は大きいが,動作中の筋力を実測す ることはほぼ不可能であることから,筋骨格モデ ルを用いた逆動力学解析による筋力推定が有用と されている6)〜8)。 近年,バイオメカニクスの目覚ましい発展によ り三次元筋骨格モデルを用いた動作解析が報告さ れている9)〜11)。しかし,脊椎を含む体幹の動作解 析については,その難易性から報告が少ないのが 現状である12)。体幹の筋骨格モデルでは,腰椎に おける二次元的解析が多数を占める6),13)〜15)。一方, 2007年に腰椎での三次元化されたモデルが報告さ れたが,胸椎は一塊として表現されているにすぎ ない16)。胸椎,腰椎を含めた二次元的解析におい ても,モデルは筋走行の直線化,関節形状を単純 化・一体化させたものであった17)。理由として, 脊柱は24個の椎体とそれを連結する椎間関節,関 節包,さらにその間に椎間板,靱帯が存在し,体 幹の支持のために脊柱周囲に多くの筋が存在する という複雑な構造を有することが挙げられる。さ らに,胸腔・腹腔内圧などの構成要素も含まれる。 これら多くの関節・靱帯・椎間板・筋群が複雑に 作用・連動し,他の関節にはみられない多様な動 作が体幹の解析を困難にしている。また,脊柱の 運動には,骨盤や下肢も密接に関連している。 このような脊柱の構造上の問題に対し,筆者ら は再現性があり,高精度で実証性のある動作解析 モデルの開発に取り組んできた。本稿では,最新 の脊椎モデルシミュレーションについて概説す る。
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