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はじめに
靱帯損傷膝の運動を評価することは,運動の見 地からみた靱帯の役割や,靱帯損傷による続発症 の発生メカニズムを解明するうえで重要である。 近年では解析技術の向上により,さまざまな手法 で膝関節の三次元運動解析が行われ,靱帯損傷膝 の運動評価にも用いられている。これまでにMRI 画像1)やradiostereometric analysis2)を用いた,三 次元的な膝運動の評価が行われてきた。これらの 手法では関節内の動態を詳細に評価できるが,各 膝屈曲角度における静的な状態を評価するため, 動的な運動の評価は不可能である。 一方,point cluster法に代表されるmotion capture systemによる膝運動評価も行われている3)。 同法では,スポーツなどにおけるダイナミックな 運動を解析可能であるが,関節内の詳細な運動の 評価は困難である。 その他の三次元運動解析の手法として,人工膝 関節全置換術(total knee arthroplasty;TKA)後 の運動解析手法として用いられてきた3D/2Dレジ ストレーション法がある4)。同法は三次元骨モデ ルをX線透視像に投影して三次元運動解析を行う もので,スポーツ活動のようなダイナミックな運 動の評価は困難であるが,関節内の詳細な運動を 高い精度で動的に評価が可能である。 これまでに前十字靱帯(anterior cruciate ligament; ACL)損傷膝の運動に対しても同法を適用して解析 が行われてきた5)〜8)。しかし,それらの先行研究の 多くはACL損傷例の非損傷側膝を健常コントロール として評価しており,非損傷側膝の運動が損傷のな い健常膝の運動と同様であるかは確認されていない。 筆者らはこれまでに独自開発の3D/2Dレジストレー ション法を用いて,ACL損傷例9)や健常膝10)の膝運動 解析を行ってきた。本稿では筆者らの三次元画像を 用いた運動解析の方法論と,それに基づいて得られ たACL損傷例と健常例の運動解析結果を報告する。
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