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はじめに
膝関節の靱帯損傷によって生じる膝不安定性 (knee instability)は,膝関節の自覚的機能を反映 する非常に重要な所見・症状であるが1),定義が 曖昧であるということ,そして客観的・定量的評 価法がないということが大きな問題であった。し かし, 用語的には,International Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicine(ISAKOS),European Society of Sports Traumatology, Knee Surgery & Arthroscopy (ESSKA)の両国際学会が提唱した「instabilityは “giving way(膝くずれ)”の症状もしくは過大な関節 運動であり,特に活動中の“giving way”事象を表現 する際に使用することが望ましい」という定義が現 在では最も広く受け入れられるようになっており 2),膝不安定性は主に前十字靱帯(anterior cruciate ligament;ACL)損傷を伴った膝関節外傷による症 状・事象として考えるべきである。臨床では膝不 安定性はpivot shift testによって評価されることが 多いが3),このテストは徒手的検査であり客観性 に乏しく,詳細な比較検討が,特に異なる検者や 施設間において困難である。そのため客観的・定 量的な計測が長年望まれていた。 2002年にBullら4)により発表された電磁気セン サーを骨に直接固定して使用する方法により,生 体内でのpivot shift現象の詳細な動作解析がなさ れた。その後,電磁気センサー装置は改良され, 非侵襲的に臨床応用可能な計測機器として発表さ れている5)。以降,現在に至るまで,より臨床的 汎用性が高いシステムが次々と発表されてきてい る6),7)。 本稿では,これらのACL損傷・再建術における 膝不安定性の評価法の最近の進展状況について紹 介する。
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