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▶ 女性骨盤部のMRI診断において,脂肪と出血の正確な評価は重要であり,脂肪抑制法の適切な併用が必要となる。
▶ 一般に,骨盤内は豊富な脂肪組織を含み,同じくT1強調像にて高信号を呈するメトヘモグロビンを含んだ内膜症性病変などの出血性病変の検出や,造影後の評価にCHESS法などの脂肪抑制法の併用が有用となる。また,成熟奇形腫や脂肪平滑筋腫のような脂肪を含む病変の診断にも有効な手法である。
▶ 一方で,少量の脂肪成分が混在する成熟奇形腫や,細胞質に脂質を含む卵巣機能性腫瘍(莢膜細胞腫やステロイド細胞腫など)の診断には,chemical shift imagingによるin–phase像とopposed–phase像の比較が有用なことがある。またMRスペクトロスコピーによる脂質の検出の有用性も報告されている。
▶ Dixon法(LAVA–FLEX法など)では,一度の撮像でin–phase像,opposed–phase像,水画像,脂肪画像が取得できる。純粋な脂肪組織から少量の脂肪成分が混在する領域までを一度に評価できるという利点があり,ルーチン化も推奨される。
▶ なお,STIR法では脂肪と縦緩和時間がほぼ同等である組織の信号が低下するため,脂肪のみならず内膜症性嚢胞などの出血性病変も低信号に描出されることがあり,注意が必要である。
▶ T1強調像にて高信号を呈するメトヘモグロビンは亜急性期出血を反映しており,急性期出血のデオキシヘモグロビンや慢性期のヘモジデリンの検出は困難である。
▶ 近年,出血による磁化率の変化に鋭敏なT2*強調像をベースとした磁化率強調シーケンス(susceptibility–weighted imaging;SWI,T2 star weighted angiography;SWANなど)を用いた出血産物の検出について,内膜症性嚢胞の壁や異所性内膜症,深部内膜症へのヘモジデリン沈着の描出,付属器茎捻転や子宮筋腫の赤色変性における血栓の検出,子宮肉腫における腫瘍内出血の評価など,婦人科領域でも有用性が報告されている。
▶ 拡散強調像は婦人科領域でも良・悪性の鑑別や転移・播種性病変の評価などに有用であるが,800〜1,000sec/mm2程度のb値では良性の病態でもT2 shine–through効果により高信号に描出されることがあり,注意が必要である。
▶ 仮想的に高b値の計算画像を作成するcomputed DWI(cDWI)の手法を用いることにより,SNR(信号雑音比)の低下なくT2 shine–through効果の影響を抑えた拡散強調像が得られ,T2値の長い良性の腫瘍類似疾患の診断や,嚢胞内容の信号抑制による壁在結節の評価などに有用と考えられる。
▶ さらに,局所励起法を用いたreduced FOV DWI(FOV optimized and constrained undistorted single–shot;FOCUSなど)とcDWIを併用することにより,T2 shine–through効果の影響を抑えた高空間分解能の画像が取得可能となり,内部構造や周囲臓器への進展の評価などに有用と考えられる。
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