連載 長期経過例に学ぶ骨折治療のエッセンス
第2回 上腕骨近位部骨折
松村 福広
1
1自治医科大学 栃木県災害医学寄附講座
キーワード:
proximal humeral fracture
,
locking plate
,
long term result
Keyword:
proximal humeral fracture
,
locking plate
,
long term result
pp.915-927
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_915
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は じ め に
上腕骨近位部骨折は全骨折の4~6%を占めるとされ,治療法としては約85~90%に保存療法が選択される1).一方でロッキングプレート(locking plate:LP),髄内釘(intramurally nailing:IM nail)の登場によって若年者や活動性が高い患者には内固定術が行われ,高齢者には人工骨頭置換術(hemiarthroplasty:HA)に加えてリバース人工肩関節置換術(reverse total shoulder arthroplasty:RTSA)が行われる症例も増えている.一般的には骨折の転位が強い症例,関節内骨折症例,多発外傷などでは手術療法を行うことが多い.また若年者や早期社会復帰を希望する場合は,手術療法によって得られるメリットは大きい.転位のある本骨折に対する手術療法と保存療法のPROFHERランダム化比較試験では,受傷後5年の臨床成績に有意差はなかったと報告2)されているが,手術療法に意味がないというわけではない.実際の臨床の中で手術療法を行うべき症例はあり,手術療法を行ったことにより後遺症なく受傷前と同様に生活している患者も多く診ている.
本稿では,上腕骨近位部骨折の長期成績について言及している報告をあげ,自験例を呈示しながら各治療法について考察した.

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