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は じ め に
骨盤輪骨折は全骨格骨折の1~3%を占めるとされている1).その頻度は二峰性で,20~40歳と65歳以上の高齢者にピークが存在する.本邦では近年,高エネルギー損傷による骨盤輪骨折よりも脆弱性骨盤輪骨折のほうが多い印象である.一方で,高エネルギー損傷による骨盤輪骨折が搬送されれば,患者の高年齢化に伴って治療に難渋することも少なくない.高エネルギー損傷による骨盤輪骨折は合併損傷を伴っていることが多く,緊急で創外固定を行うことができても至適時期に適切な内固定を行えない症例がある2).ただし,できる限り早期に骨盤輪全体を強固に固定することは重要であり,近年では経皮スクリュー固定や皮下創内固定などの低侵襲手術からプレート固定までさまざまな内固定法が浸透している3).
骨盤輪骨折の成績不良因子としては,恥骨枝10mm以上の垂直転位や後方骨盤輪10mm以上の転位,15°以上の回旋変形,腰仙部神経叢損傷,合併損傷の存在などが報告されている4~7).受傷時の損傷程度や合併症の存在は外科医が関与することはできないが,完璧でなくとも前述の変形を生じさせない骨盤輪の再建が求められる8).さらに確実な疼痛予防のために,仙腸関節の骨性癒合も重要である9).強固な固定と解剖学的再建は骨折治療の基本であり,良好な長期成績を獲得するためには重要である.ただし後述するが,高エネルギー損傷による骨盤輪骨折では骨盤周囲の合併損傷の診断が困難な症例を経験しており,外来診療時には患者の訴えに耳を傾け,愁訴があればその原因を探ることが必要になる.本稿では長期成績に関する報告をまとめ,長期にわたって追跡調査している骨盤輪骨折の自験例をふまえて考察した.

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