連載 長期経過例に学ぶ骨折治療のエッセンス
第3回 肘関節周囲骨折
松村 福広
1
1自治医科大学 栃木県災害医学寄附講座
キーワード:
radial head fracture
,
radial-head arthroplasty
,
long term result
Keyword:
radial head fracture
,
radial-head arthroplasty
,
long term result
pp.1013-1025
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_1013
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は じ め に
肘関節周囲骨折は構成する骨や靱帯を含んだ解剖学的形態が複雑で,屈曲,伸展,回内,回外の動きに関与するため骨折治療に難渋することがある.特に複合損傷の場合は,苦手意識のある整形外科医も多いのではないであろうか.関節内骨折治療の原則は解剖学的整復と強固な固定によって早期に可動域訓練が行えることであるが,肘関節は上腕遠位,橈骨,尺骨による三つの関節面が存在するためさまざまな手術アプローチが存在し,靱帯損傷を合併している場合はその修復法や後療法にも迷うことは多い.手術療法がうまくいった場合でも,可動域制限が残存することがあり,受傷時に軟骨が損傷した症例では経時的な関節症変化とそれに伴った症状が出現する.
肘関節周囲骨折の損傷形態は複雑でバリエーションに富んでいるため,そのすべてを本稿で取り上げることはむずかしい.過去の長期成績の報告は橈骨頭骨折を含んでいるものが多いため,本稿では橈骨頭骨折を伴った症例の自験例を呈示し,これらに関する報告をまとめ各治療法について考察した.

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