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は じ め に
腰椎分離症を発生する症例の特徴として,股関節周囲の筋柔軟性低下1~3)や体幹の筋柔軟性低下4,5)を有する例が多いとされており,体幹硬性装具の装着期間中のリハビリテーション6,7)において,股関節および体幹の筋柔軟性を改善することは,腰椎分離症発生予防の観点から重要であると考えられる.
筋柔軟性低下が起こる原因として,骨成長に伴う相対的な筋肉の伸張と報告されている8).骨の成長は11歳から急激な増加を示しており9),腰椎分離症の好発年齢である14歳前後10~12)と一致することから,成長期による筋柔軟性低下が腰椎分離症発生要因の一つと考えられてきた.しかし,成長期前の段階である10歳以下での腰椎分離症発生例の報告12,13)も散見され,特に小学生低学年(低年齢)での腰椎分離症発生例は潜在性二分脊椎(spina bifida occulta:SBO)の存在11,12,14)が多いとされている.SBOは椎体の骨性輪状構造が破綻15)している状態であり,危険因子を先天的に有しているため,遺伝的要因が腰椎分離症の発生要因であるとの見方もある.そのため成長期前の症例は,筋柔軟性低下より遺伝的要因が発生にかかわっている可能性がある.また,腰椎分離症発生に対する筋柔軟性低下の報告は全年代を対象としており,年代別の報告は存在しない.
本研究の目的は,新鮮腰椎分離症を発生した症例の筋柔軟性を各年代で調査し,比較・検討してその特徴を明らかにすることである.腰椎分離症例における筋柔軟性低下は,成長期による骨の成長が相対的な筋の伸張性低下を引き起こす8)ためであると考えられ,筋柔軟性低下の程度は中学生,高校生では小学生よりも高く,また小学生では筋柔軟性低下よりも遺伝的要因であるSBO保有例が多いことが腰椎分離症の発生要因ではないかと仮説を立てた.
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