Vocabulary
筋シナジー
金岡 恒治
1
1早稲田大学スポーツ科学学術院
pp.76-76
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_76
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ヒトは身体中の600個近くの筋肉を使って,精緻な運動を行っている.たとえば端坐位で右手で机の上のグラスを持ち上げるときには,グラスの中の液体残量を予測し,その重さを推定し,不安定な構造の脊柱を体幹筋活動によって支え,次いで肩甲帯周囲筋群を活動させて肩甲骨を適切な位置に支え,手内筋や手指の屈筋を活動させてグラスを把持しながら,三角筋によって上肢を挙上させる.健常者は上肢を挙上する際に,三角筋よりも体幹深部筋である腹横筋が先に活動することをオーストラリアの理学療法士であるHodgesらが報告し,腰痛患者にはこの腹横筋の先行収縮現象が認められなかったと報告している1).もし体幹筋が適切なタイミングで活動しなければ不安定な脊柱に加わる外乱によって,腰椎椎間板,椎間関節,仙腸関節などの関節に過剰な負荷が加わり腰痛発症の引き金となる.また,もしグラスの重さを誤って推定して持ち上げたときには脊柱に負荷が加わるのみならず,体勢を立て直そうとして脊柱起立筋に大きな活動が生じ,筋性腰痛のきっかけともなる2).
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