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外傷性脊椎損傷手術患者に対する経頭蓋刺激運動誘発電位の有用性
-――日本脊椎脊髄病学会モニタリングワーキンググループ多施設前向き研究
Role of transcranial motor evoked potential monitoring during traumatic spinal injury surgery:a prospective multicenter study of the Monitoring Committee of the Japanese Society for Spine Surgery and Related Research
後迫 宏紀
1
H. Ushirozako
1
1公立森町病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Morimachi Public Hospital, Shizuoka
キーワード:
transcranial motor evoked potentials
,
traumatic spinal injury
,
neurological complication
,
prospective study
Keyword:
transcranial motor evoked potentials
,
traumatic spinal injury
,
neurological complication
,
prospective study
pp.1075-1077
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_1075
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【要 旨】
目 的:術中脊髄モニタリング(IONM)は,術中脊髄障害の可能性が高い脊髄腫瘍や後縦靱帯骨化症などのハイリスク脊椎手術中に必須の手技である.本研究では外傷性脊椎損傷手術に対する経頭蓋刺激運動誘発電位(Tc–MEP)モニタリングの有用性を検討した.
対象および方法:日本脊椎脊髄病学会モニタリングワーキンググループに所属している国内14施設にて,Tc–MEPを行った外傷性脊椎損傷手術患者350例(平均年齢69歳)を対象とした.アラームポイントはベースライン波形振幅の70%以上低下とした.Tc–MEPモニタリング精度,rescue症例(術中アラームに対して介入手技実施後に最終波形振幅が改善し,術後の新規麻痺がない症例),アラーム誘発操作,介入手技を検討した.
結 果:真陽性率2.0%,偽陽性率9.1%,偽陰性率0.3%,rescue 3例(0.9%)であり,感度88%,特異度90%,陽性的中率18%,陰性的中率99%であった.Tc–MEPアラームがもっとも頻繁に発生した手術手技は除圧操作(40%)であり,介入手技として追加除圧でrescueされた.
結 論:外傷性脊椎損傷手術中の新規麻痺発生率は2.3%であり,陽性的中率が18%と低いため,Tc–MEPモニタリングの単独使用は推奨されなかった.今後はmulti-modal IONMの適切な解釈および麻酔科医との協力を通じて,偽陽性アラーム率の低減に努める必要がある.
© Nankodo Co., Ltd., 2024