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【要 旨】
目 的:中枢性感作は中枢神経の過興奮な生理状態であり,痛覚過敏とそれに伴うさまざまな身体症状が出現する.腰部脊柱管狭窄症患者の中枢性感作の程度が手術成績に影響を及ぼすかは不明である.本研究では,中枢性感作を包括的なスクリーニングツールであるCentral Sensitization Inventory(CSI)で評価し,術前CSIが腰部脊柱管狭窄症患者の手術成績に影響を及ぼすか否かを評価したので報告する.
対象および方法:2019年3月~2020年5月に当院および関連7病院で腰部脊柱管狭窄症に対し手術療法を行った197例(平均年齢69.3歳)を対象に前向き試験を行った.① 術前および術後12ヵ月にCSIおよび腰椎治療評価[Oswestry Disability Index(ODI),日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア),日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOA-BPEQ)]を調査し,術前CSIとの相関性を統計学的に解析した.② 中枢性感作の重症度をCSIスコアで軽度(0~29),中等度(30~39),高度(40~)の3群に分け,腰椎治療評価を比較・検討した.③ 重回帰分析で術前CSIと術後の腰椎治療評価との関連性を評価した.
結 果:① 術前CSI(21.8±11.3)は術後12ヵ月(17.9±13.5)に有意な低下を認めた(p<0.01).術前CSIは術前後において,すべての腰椎治療評価と低~中等度の相関性(r=0.2~0.5)を認めた.② 術前後のJOAスコア,JOA-BPEQは,CSI重症度に比例して不良であった(p<0.05).また,術前後の腰痛VAS,下肢痛VAS,下肢しびれVAS,ODIはCSI重症度に比例して高値を示し,CSI高度群の改善率は軽~中等度群と比較し,有意に不良であった(p<0.05).③ 重回帰分析の結果,術前CSIはJOAスコアの変化量,下肢しびれVASの変化率,術後12ヵ月の疼痛関連および心理障害(JOA-BPEQ)およびその変化量と有意な関連性を認めた.
結 論:腰部脊柱管狭窄症患者の術前後の神経症状および手術成績は,中枢性感作の重症度に応じて不良であった.術前CSIは腰部脊柱管狭窄症患者の手術成績の予測因子となる.
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