連載 整形外科医が知っておきたい他科の知識
不眠の診立てと治療指針
三島 和夫
1
1秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授
キーワード:
不眠症
,
睡眠薬
,
薬物療法
,
適正使用
,
ガイドライン
Keyword:
不眠症
,
睡眠薬
,
薬物療法
,
適正使用
,
ガイドライン
pp.881-886
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_881
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は じ め に
不眠症はもっとも罹患頻度の高い睡眠障害の一つである.国内の成人の30%以上が入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠困難などのいずれかの不眠症状を抱えており,不眠症状に加えて日中の機能障害を併発している不眠症(不眠障害)に該当する者は成人の6~10%に達する.不眠症状は多くの人が経験しその大部分は一過性で自然消退するが,一部は症状が遷延し慢性不眠に移行する.そのため,睡眠薬はもっとも処方頻度の高い薬剤の一つであり,日本の成人の約5%が医療機関から睡眠薬を処方されている.睡眠薬は20~50歳代の若年~中年層では精神科・心療内科での処方が多いものの,60歳代以降のいわゆるリタイア世代では一般診療科での処方が圧倒的に多い.整形外科も慢性疼痛を伴う疾患が多いため,不眠を訴える患者が多く,睡眠薬を処方する機会が多い診療科の一つである.
さて,不眠症状(入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒)があると即座に「不眠症」,「睡眠薬」を思い浮かべがちであるが,きわめて誤診が多い.現在知られている睡眠障害は70種類以上あり,有病率が高いものが多く,その大部分で夜間の不眠症状や日中の眠気を伴うためである.不眠症状を訴えて受診する患者のうち,不眠症(原発性不眠症)は2割程度であるとの試算もある.
本稿では,冒頭で睡眠障害の診立て方(スクリーニング法)を紹介した後に,『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』1)のコンセプトに沿って,患者にとっても医療者にとっても安全・安心な不眠症の薬物療法のあり方について解説する.
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