特集 内科医と睡眠障害―睡眠障害の診断と治療をプライマリ・ケアに
不眠の原因と治療
高齢者の不眠
野田 明子
1,2
,
岩本 邦弘
1,2
,
尾崎 紀夫
1,2
Akiko NODA
1,2
,
Kunihiro IWAMOTO
1,2
,
Norio OZAKI
1,2
1中部大学大学院生命健康科学研究科
2名古屋大学大学院医学系研究科
キーワード:
不眠症
,
睡眠衛生指導
,
認知行動療法
,
薬物療法
Keyword:
不眠症
,
睡眠衛生指導
,
認知行動療法
,
薬物療法
pp.1071-1077
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika120_1071
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Summary
▪加齢に伴い,深睡眠の減少,中途覚醒の増加および睡眠効率が低下する.さらに,概日リズムも加齢の影響があり,高齢者では睡眠・覚醒リズムの位相が前進する.
▪生理的変化も影響し,高齢者では約30%が不眠を訴える.不眠はうつ病の初期症状として重要であり,うつ病再発リスクを高める.また,不眠は高齢者の転倒・骨折のリスクも上昇し,高血圧・動脈硬化を促進する.
▪睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群,周期性四肢運動障害およびレム睡眠行動障害などの睡眠障害も加齢で増加する.これら多くの睡眠障害では不眠症状が共通に認められるため,多数の睡眠障害を適切に除外することが必要であり,問診のみでは鑑別できないこともある.睡眠習慣に起因する不眠を訴える高齢者も多いため,睡眠日誌およびアクチグラフィーを用い,睡眠衛生指導は薬物療法前の基礎的介入として位置づけられる.
▪安全性・持続性の高い認知行動療法は高齢者の不眠においても有効な非薬物療法であり,予防的効果も期待される.ベンゾジアゼピン系睡眠薬は催眠作用に加え,筋弛緩作用および抗不安作用などももたらし,転倒・せん妄および認知機能の低下などの問題があるので,使用は最小限かつ短期間が望ましい.また,生体リズムの位相変位をもつメラトニン受容体作動薬および覚醒系神経核群の活動を抑制するオレキシン受容体拮抗薬は今後の検討が必要である.
© Nankodo Co., Ltd., 2017