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は じ め に
変形性関節症(osteoarthritis:OA)は,老化性退行変化を基盤とした関節軟骨の変性および骨性増殖を本態とし,これらの変化に伴い関節痛・運動障害をきたす疾患である.2022年時点で体系的にOA治療に関する情報が推奨度とともに整理されたガイドラインは,2019年に改訂が行われた国際変形性関節症学会(OsteoArthritis Research Society International:OARSI)ガイドラインであるが1),OAにおいて構造学的評価法が確立していないため,現在上市されるOA治療薬は臨床症状に対する対症療法が中心となっている.OA治療において現時点ではstructure modificationを可能とする薬剤が存在しないので,関節軟骨の破壊が進行した症例において人工関節置換を行うというのは一般的な見解であろう(軟骨再生細胞療法などの適応は除く).すなわちOA治療の意思決定において,初期から中等度OAに関する治療法の選択,手術適応が重要な要素であり,その意思決定には臨床症状と構造学的評価ツールが必須である.
MRIは優れた軟骨描出能をもつものの,スペースや医療経済的制約が大きいこと,撮像条件が煩雑で検査時間を要することから,OAのスクリーニング検査としては現実的でない.これに対してX線撮影装置は広く普及し,検査が安価かつ簡易であることから,その情報を有効利用することができれば使用範囲はきわめて大きいものと考えられる.最近医用画像分野においてもデジタル化がすすみ,X線像も,ほとんどの場合デジタル画像で提供されるため,その解析にはコンピュータが利用される機会が多い.コンピュータを用いた医用画像解析は,computer-aided detection/diagnosis(CAD)と呼称される「医師による診断を側面から支援する」ソフトウエアやシステムとして,臨床の現場に導入される事例が多い.CADは病変候補の位置情報をマーキングする検出支援(computer-aided detection:CADe),質的診断に関する情報も提示する診断支援(computer-aided diagnosis:CADx)の二つに大別され,そのアルゴリズムには機械学習が活用される.
筆者らは,統計ベースの機械学習を応用したCADeとなる変形性膝関節症単純X線像における重症度自動定量評価システムKOACAD(knee OA computer assisted diagnosis)の開発を行った2).KOACADは,デジタルフィルタによる画像ノイズ除去,骨の輪郭線抽出と情報の統計処理による基準点標準化を経て,内外側関節裂隙最小距離および面積,脛骨内側骨棘面積および大腿脛骨角(FTA)計測を行うソフトウエアであり,計測基準点設定の際の誤差を最小とすべく上記の動作のすべてが全自動で行われる(図1).
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