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【要 旨】
目 的:肩腱板大・広範囲断裂ではしばしば上肢が挙上できなくなるが,機能障害が生じる断裂範囲は明確ではない.本研究の目的は,肩腱板大・広範囲断裂において上肢挙上が不可能になる腱板断裂範囲と三次元動態の特徴を検討することである.
対象および方法:挙上時に強い痛みを伴わない腱板大・広範囲断裂患者を対象とした.自動挙上90°未満を偽性麻痺群(P群:8例9肩,平均76.1±8.6歳),90°以上を非偽性麻痺群(NP群:5例6肩,平均75.8±6.1歳)とした.MRIで前方断裂範囲(肩甲下筋),後方断裂範囲(棘上筋,棘下筋,小円筋の合計),全断裂範囲(前後の合計)を評価した.肩甲骨面挙上動作のX線透視画像を撮影し,2D/3D registration法を用いて三次元動態解析を行った.断裂範囲と三次元動態を両群間で比較した.また,断裂範囲と三次元動態の関連性も検討した.
結 果:骨頭中心の上方到達点はP群6.7±3.0mm,NP群3.6±1.3mmとP群で有意に上方に位置した(p=0.032).また,断裂範囲と骨頭中心位置との間に有意な相関関係を認めた(上方:r=0.68,前方:r=0.68,後方:r=−0.80).胸郭に対する上腕骨の外旋角度はP群16±31°,NP群91±21°とP群で有意に小さかった(p<0.0001).また,後方断裂範囲が大きくなると肩甲上腕関節の外旋角度は小さくなる傾向を認めた.
結 論:前後の腱板断裂が拡大すると骨頭の前後,上方への変位が増大し,後方の腱板断裂は肩甲上腕関節の外旋低下を引き起こした.偽性麻痺症例の三次元動態の特徴として,骨頭の上方変位,上腕骨の外旋不足があげられた.
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