Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
頚椎の固定術は前方法と後方法に大きく分けられる.このうち後方法は,移植骨をワイヤーで固定する手技に始まり,金属ロッドをワイヤーで固定する手技,現在ではポリアキシャルスクリューを用いた手技が一般的になっている.
また固定アンカー法には,上位頚椎に環椎外側塊スクリュー1,2)や軸椎椎弓根スクリュー,さらに椎弓スクリューなどが用いられ3),中下位頚椎にも外側塊スクリューや椎弓根スクリューなどのさまざまな固定方法が用いられるようになっている4~6).いずれも脆弱骨にいかに安全かつ強固に固定を行うべきか,それぞれのスクリュー固定法についての議論が行われている.
一方でこれまでのインプラント開発はもちろんであるが,術中CTナビゲーションなどのコンピュータ支援整形外科手術(computer-assisted orthopaedic surgery:CAOS)の普及なども加わり頚椎手術の安全性が向上していることは間違いない.上位頚椎~中下位頚椎にさまざまな固定アンカー法が用いられるようになったことに対して,このCAOSがはたした役割は大きい7).
当施設でも脊椎ナビゲーションを導入後,ポイントレジストレーションによるナビゲーションを用いた頚椎後方固定術を行っていた.2019年4月からはO-arm2(Medtronic社,Dublin)を導入し,術中CTナビゲーションを用いたリアルタイムナビゲーションによる頚椎後方固定術が可能となった.しかしながら,これまでのナビゲーション手技は術野から目を離し,据え置き型のディスプレイをみる必要があるため,プローブ,ドリル,タップ,スクリューの挿入の際に手元がぶれることがある.特に上位頚椎の手技では,誤って椎骨動脈(vertebral artery:VA)を損傷するリスクやC1-C2間の硬膜外静脈叢からの出血を生じ,その止血に難渋することも危惧された.そこでヘッドマウントディスプレイ(head mounted display:HMD)を術中CTナビゲーションに応用できれば,術者のストレス軽減や手術手技の安全性の向上に寄与すると考えた.
本稿では,現在われわれが行っているスマートグラスを活用した頚椎後方固定術に対するコンピュータ支援脊椎手術について解説する.
© Nankodo Co., Ltd., 2021