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は じ め に
近年増加傾向となっている高齢者の脆弱性骨盤骨折(fragility fractures of the pelvis:FFPs)は疼痛が遷延しやすく,長期間の臥床に伴う日常生活活動の低下が問題となる.一方,観血的骨盤内固定術は,侵襲が大きいことや周術期合併症が問題となるため,FFPs全例に手術をすることはむずかしい.
2013年にRommensら1)がFFPsの新しい分類(Rommens分類)を提唱して以来,一般的にFFPsはその不安定性に基づいて治療される.同分類では,前方骨盤輪のみの骨折(いわゆる恥坐骨骨折)であるtype Ⅰは保存的治療が選択されるが,後方骨盤輪が部分的に不安定な骨折(仙骨不全骨折や転位のない仙骨骨折)であるtype Ⅱは保存的治療で痛みや体動困難が続く場合にのみ経皮的スクリュー固定が推奨されている.また,前方骨盤輪の損傷に加えて片側後方骨盤輪の完全破綻(片側の仙骨・腸骨や仙腸関節の破綻)を認めるtype Ⅲは経皮的スクリュー固定もしくは観血的整復固定,両側の後方骨盤輪の破綻にspino-pelvic dissociationを伴ったtype Ⅳは観血的整復固定術が推奨されている.
以前は,転位のないFFPsの治療方針として保存的治療が第一選択であったが2),高齢者にとって臥床期間の長期化は日常生活活動レベルを低下させることで,社会的・身体的自立を困難にし,死亡率の上昇にもつながる3).そのため,大腿骨近位部骨折と同様に,受傷後すぐに離床できないようなFFPsに対しては,早期手術・早期社会復帰が望ましい.
しかし,併存症が多く予備力の少ない高齢者に高侵襲な手術を行うことで,かえって社会復帰を妨げるリスクもある.そこで,FFPsに対して手術的治療を行う場合は可能な限り低侵襲手術が推奨されるようになり,そのような治療としてtrans iliac trans sacral screw(TITS screw)法が開発された4).本法は比較的安全で低侵襲であり,小皮切(5cm程度)で行うことが可能であるため,保存的治療と比較しても疼痛改善率は高く,退院時の歩行可能距離も長いと報告されている5).
そこでわれわれはRommens分類type ⅡのFFPs全例に対して受傷後可及的早期にTITS screwによる固定を行い,その有用性や合併症を調査した.
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