Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
脆弱性骨盤輪骨折は近年増加傾向にある脆弱性骨折である.フィンランドのFinnish National Hospital Discharge Register(NHDR)をもとにしたデータの試算では2030年には2013年比で2.4倍に発症数が増加するといわれている1).
また好発年齢は80歳台とされており1~3),治療対象は超高齢者(90歳以上)であることがしばしばである.脆弱性骨盤輪骨折はfragility fractures of the pelvic ring(FFP)として骨折型の分類とともに推奨の治療法を2013年にRommensらが発表3)し,広く認識されるようになった(表1).
FFP Rommens分類type Ⅲa(FFP type Ⅲa)であるが,前方要素は恥骨および坐骨または恥骨結合で完全な片側の破壊があり,後方要素は片側腸骨の転位した骨折を有するものである.Rommensは2007~2012年に入院加療を行ったFFP245例中の20例(8%)がtype Ⅲaであり,転位型であるtype ⅢとⅣに限れば,type Ⅳb(37例15.1%)の次に多い骨折型である3)と報告している(図1).
骨盤輪は後方要素は腸骨骨折により破綻し,前方要素は恥骨・坐骨骨折,もしくは恥骨結合離開で破綻し不安定であり,Rommensは腸骨骨折部にはプレート固定,前方要素に対しては経皮的恥骨枝スクリュー固定もしくはプレート固定を推奨している3).
腸骨骨折部に対してLC-2スクリューを用いて経皮的に内固定を行う方法4)や脊椎インプラントを用いた腸骨固定法などもFFP type Ⅲaに対する治療法として報告された13).LC-2スクリューは下前腸骨棘(anterior inferior iliac spine:AIIS)から腸骨髄洞を通過し下後腸骨棘(posterior inferior iliac spine:PIIS)に向かうスクリュー固定法で,もともとは高エネルギー骨盤輪骨折のYoung-Burgess分類lateral compression type 2の腸骨骨折に対する治療法として報告されたものである4).高エネルギー外傷,多発外傷患者における小侵襲手術としての有用性の報告5)が多く,脆弱性骨盤輪骨折患者に対しても,小侵襲であることは大きな利点となる可能性がある.
今後これらの手術的治療に関し,より議論されることになると考える.本稿では,FFP type Ⅲaに対する脊椎インプラントを用いた腸骨固定法に関して当院での小経験を報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2020