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は じ め に
骨は骨基質と骨塩で構成される.建物にたとえると骨基質が鉄筋,骨塩がコンクリートである.骨形成不全症は,骨基質(鉄筋)の主成分であるⅠ型コラーゲンの異常により,易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱症状に加え,さまざまな程度の骨外症状(成長障害,青色強膜,象牙質形成不全,難聴,関節や皮膚の過伸展など)を呈する先天性疾患である.遺伝子変異により,Ⅰ型コラーゲンの量的あるいは質的異常が引き起こされる.一般に量的異常は軽症の経過を示し,質的異常は中等症~重症を示す.遺伝子変異はⅠ型コラーゲン遺伝子そのものだけでなく,Ⅰ型コラーゲン遺伝子発現後から細胞外に出て成熟するまでのプロセスのいずれかにかかわる因子の遺伝子変異によっても発症することが明らかになっている1).
骨形成不全症の臨床像の重症度は非常に幅広く,生まれてすぐ死亡する周産期致死型から,生涯にわたり明らかな症状がなく,遺伝子家系解析などで偶然発見されるものまである.現在,臨床的な重症度や症状のみで分類された古典的なSillence分類のtype Ⅰ~Ⅳに加え,Ⅰ型コラーゲン遺伝子の発現から細胞外マトリックスに出て成熟するまでにかかわる蛋白質を規定する遺伝子変異と骨形成不全症の分類を一遺伝子一分類で対応させ,type XXまで分類されている2).小児期の骨形成不全症に対する治療は,1990年代までは科学的に有効と示された治療はなく,骨折時の対症療法が主な治療であった.2000年にパミドロン酸による治療が有効であるという報告3)が発表されて以来,さまざまな治療が研究されるようになった.現在の主な治療戦略は根本的な治癒ではなく,骨塩量の増大である.理論上,Ⅰ型コラーゲンの質的異常のある骨形成不全患者は骨塩量が健常者と同等であっても骨強度は低くなる.健常者と同等の骨強度を目指すのではなく,質的な異常は残るものの,骨強度を上昇させるために骨塩量を増大させるという治療戦略である.主に骨塩量を増大させる方法としては,骨吸収の抑制と骨形成の促進の二つがある.根本的な治療としては,遺伝子治療や細胞治療であるが,現在治験として海外で行われている間葉系幹細胞を用いた細胞治療については本稿では割愛する.本稿で扱う薬剤を表1に示す.
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