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は じ め に
上腕骨外側上顆炎は別名テニス肘とも呼ばれ,疼痛が手関節伸筋群を中心とした肘外側部周辺に生じる代表疾患である.テニスやゴルフなどのスポーツ障害だけではなく,大工や清掃員,秘書などの前腕の回旋や手関節の伸展,把握動作を繰り返し行う必要がある者にも発生するといわれている1,2).近年では,パソコン作業に従事するvisual display terminals作業従事者(VDT作業者)に発症する割合が高いと報告されており3),日常診療で遭遇する機会が多い疾患である.
上腕骨外側上顆炎の診断は,① 抵抗性手関節背屈運動で肘外側に疼痛が生じる,② 外側上顆の伸筋腱起始部にもっとも強い圧痛がある,③ 腕橈関節障害など伸筋腱起始部以外の障害によるものは除外するとされており4),タオルを絞る,ビールジョッキをもつなど前腕伸筋の収縮で増悪する肘外側部痛で,上腕骨外側上顆に圧痛があり,wrist extension test,middle finger extension testなどの誘発試験において陽性を示した例がテニス肘と診断される4).理学所見においては,肩甲骨下角を固定して上腕骨を水平内転させるテストで,大円筋の緊張状態を反映しているとされるhorizontal flexion test(HFT)がテニス肘例では,罹患側のHFT陽性率が100%となることが知られており5),リハビリテーションの際には局所の治療のほかに,肩甲帯を含めた治療の重要性が述べられている5).
一方,overhead motionが含まれる上肢のスポーツであるバレーボール,野球,テニスなどでは,下肢から体幹,そして上肢につながる運動連鎖が重要であり,股関節の関節可動域(ROM)の制限やコアスタビリティ(骨盤・体幹の位置および運動制御能力)の低下が肩や肘の障害と関連していることが示唆されている6,7).さらに,Sekiguchiらも,股関節のROM制限と上肢障害の関連性について述べている8).これらのことから,上肢機能障害を生じている症例には,肩甲帯や体幹,股関節などの局所以外の関節などにも問題が生じている可能性が考えられ,上腕骨外側上顆炎と股関節のROM制限についても関連している可能性が考えられる.しかしながら,これまで上腕骨外側上顆炎例の股関節可動域について調査した報告は少ない.本研究では,上腕骨外側上顆炎例の股関節ROMを調査し,その関連性について考察した.
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