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特集 整形外科臨床研究の手引き――適切に行い,正しく読み解くために
Ⅱ.臨床研究のデザイン
3.記述疫学研究
Descriptive epidemiology
福島 若葉
1
W. Fukushima
1
1大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学
1Dept. of Public Health, Osaka City University Graduate School of Medicine, Osaka
キーワード:
descriptive epidemiology
,
measure of disease frequency
,
nationwide epidemiological survey
Keyword:
descriptive epidemiology
,
measure of disease frequency
,
nationwide epidemiological survey
pp.523-527
発行日 2020年5月30日
Published Date 2020/5/30
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_523
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は じ め に
疫学(epidemiology)は,「人集団における健康関連事象(主に疾病)について,頻度・分布と規定要因を明らかにし,その結果を対策に応用する学問」と定義されている.疫学で用いる研究デザインは,おおむね図1のように分類される.すなわち,本項で扱う「記述疫学(descriptive epidemiology)」は,エビデンスレベル(研究結果から得られる根拠の質)がもっとも低い研究デザインに該当する.
より質の高い医学研究への興味が高まるなか,特に若手の研究者で,記述疫学研究を軽視する傾向があるかもしれない.しかしながら,記述疫学は,疫学の定義に照らし合わせると「疾病の “頻度・分布” の解明」を担うものである.ある疾病について,患者数などの頻度や,性・年齢などの特性の分布がわからなければ,医療供給体制や行政サービスがどの程度必要か予測できないだけでなく,エビデンスレベルがさらに高い医学研究の計画も立てようがない.すなわち,記述疫学とは,疫学研究デザインの中でも基本の「き」に相当するものであることをまずご理解いただきたい.
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