2001フロントライン 看護研究
看護を記述することの可能性—助産婦のケア実践の記述的研究を通して
谷津 裕子
1
1日本赤十字看護大学
pp.941-947
発行日 2001年10月1日
Published Date 2001/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903831
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はじめに
近年,看護研究の数はうなぎのぼりに増え,またそのテーマや方法は実に多種多様である.生理学的な変化をみる研究から,社会学的な環境変数がひきおこす心身の諸変化を調べる研究,患者のライフヒストリーを通して病を持って生きることの意味や価値観を知る研究など,看護を捉える視点の豊富さにはただ目を見張るばかりである.
しかしひとつ気づくことは,看護の現象,すなわち看護者と患者のあいだで起きている生身の現象を対象とした研究が思いのほか少ないということである.翻って考えるに,これまで看護の領域では,「看護の現象とは何か」という問いが十分に追究されてこなかったのではなかろうか.ナイチンゲールが看護とは何かを定義し,その影響力を統計的に示して以来,看護の科学化は勢いよく進展した。しかしながら,そこでの科学化は17世紀の科学革命以後発展した近代科学の方法論的特徴注)を模したものであり,看護現象に固有の,看護者と対象者のあわいにおこる生き生きとした「現実」を取り扱うには,必ずしも適切な方策とは言えなかったと思われる.
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