Japanese
English
連載 専門医試験をめざす症例問題トレーニング
脊椎・脊髄疾患
Spine and spinal cord disease
大谷 晃司
1
K. Otani
1
1福島県立医科大学医療人育成・支援センター
1Center for Medical Education and Carrier Development, Fukushima Medical University, Fukushima
キーワード:
low back pain
,
non-specific
,
psychosoial
Keyword:
low back pain
,
non-specific
,
psychosoial
pp.470-473
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_470
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症 例.51歳,男.
主 訴:腰痛.
現病歴:作業中に脱水となり,転倒した.給水で脱水症状はすみやかに回復したが,腰痛のため,ゆっくりとしか歩行ができなくなった.前医で各種精査を行ったが,原因を特定できなかった.症状不変で職場復帰ができないため,症状発生後1年経過して,当科を紹介され受診した.
当科初診時身体所見:自覚症状として,両足関節以下のしびれを訴えるが,神経学的に特記すべき所見はなかった.脊柱の動きによる疼痛の誘発はない.腰部,骨盤近傍に何らかの圧痛はなかった.姿勢はやや前屈位で,右T字杖歩行であった.歩行1~2分で脊柱前屈が強くなり,歩行ができなくなると訴えた.腰椎の単純X線像とMRI T2強調画像を示す(図1,2).
社会的背景:家族構成は,妻と高校生,中学生の子ども2人であった.当科受診時点で腰痛のため休業しており職場復帰をしていないが,発症後10ヵ月間は会社から,その後は,保険会社から約1年半をめどに傷病手当金が出ていた.妻は就労しており,家庭の収入はそれなりにあるとのことであった.
経 過:痛みを完全に消失させることは最終目標とし,まずは腰痛を抱えながらも傷病手当金がでているうちに,職場復帰できることを当面の目標とした.その際,会社の産業医と連携をとりながら復帰プログラムを作成した.妻の協力のもと,10分間休まずに散歩するといった短期的に達成可能な目標を段階的にクリアすることからはじめ,最終的には腰痛は軽度残存するものの,職場復帰を果たすことができた.
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