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【要 旨】
背 景:腰椎変性すべり症に対する手術的治療は,主に不安定性進行に伴う症状悪化から固定術の併用を推奨している.しかしながら,われわれの山村地域住民における15年の縦断コホート研究では,すべりの有病率は年齢とともに増加するが,そのすべりの進行程度は経年的に減少することを報告した.また,日常診療で経験する変性すべりは,Meyerding分類gradeⅡまでであり,それ以上のすべりを経験することはない.これらのことから,すべりはある時期に進行するが,その時期を過ぎると変性変化とともに安定化に向かうものと考えられる.本研究では,不安定性を有する腰椎変性すべり症に対する内視鏡下除圧術の臨床成績を検討した.
対象および方法:対象は,2003~2010年に10°以上の変性側弯を除くL3またはL4の変性すべりに伴う腰部脊柱管狭窄症で,手術的治療を要した全例に内視鏡下椎弓形成術(MEL)を施行した302(男126,女176)例(年齢68.9歳)であった.症例は,術前単純X線側面像で%slipが20%以上かつ前後屈で5%以上または後方開大5°以上の定義で不安定性の有無に分けられ,術後2年以上の追跡調査が行われた.調査項目は,日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)[29点満点],JOA改善率,腰痛visual analogue scale(VAS),成績不良例であり,不安定性の有無別に統計学的検討を行った(p<0.05).
結 果:追跡調査は245(男102,女143)例(平均年齢68.1歳)に可能であり,その追跡期間は平均43.0ヵ月であった.%slipは全体で術前17.1%,調査時17.7%であり,不安定性群でもすべりの進行はなかった(p>0.05).対象例全体のJOA改善率は,64.8%であり,不安定性の有無別で有意差はなかった(p>0.05).また,不安定性あり群では,37%で経年的に椎間高の減少とともにすべりの安定化がみられた.全体に下肢痛は改善していたが,不安定性あり群では腰痛が有意に遺残していた(p>0.05).
結 論:不安定性を有する腰椎変性すべり症に対するMELの中長期臨床成績は,全体で良好に保たれ,不安定性腰椎は経年的に安定化していた.しかし,腰痛遺残に腰椎不安定性が関与していた.
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