Japanese
English
臨床室
トラニラストおよびCox-2阻害薬併用療法が著効した背部デスモイド型線維腫の1例
Remarkable response to tranilast and Cox-2 inhibitor combination therapy in a case of desmoid-type fibromatosis in the back;report of a case
山下 学
1
,
佐々木 裕美
1
,
永野 聡
1
,
前迫 真吾
1
,
瀬戸口 啓夫
2
,
谷口 昇
1
M. Yamashita
1
,
Y. Sasaki
1
,
S. Nagano
1
,
S. Maesako
1
,
T. Setoguchi
2
,
N. Taniguchi
1
1鹿児島大学大学院整形外科
2鹿児島大学大学院医療関節材料開発講座(京セラ)
1Dept. of Orthop. Surg., Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima
キーワード:
desmoid-type fibromatosis
,
tranilast
,
cyclooxygenase-2 inhibitor
,
partial response
Keyword:
desmoid-type fibromatosis
,
tranilast
,
cyclooxygenase-2 inhibitor
,
partial response
pp.441-444
発行日 2019年5月1日
Published Date 2019/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_441
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デスモイド型線維腫(以下,デスモイド)は,深在性に発生する線維性腫瘍で浸潤性増殖を特徴とし,中間型に分類される.年間100万人中2~4人に発症するといわれ,発生部位により腹壁外デスモイド,腹壁デスモイド,腹腔内デスモイドの3型に分類される.腹壁外腫瘍の多くはβカテニン遺伝子の変異が発症原因とされる1).局所再発率が24~77%と高いことから,広範切除術が治療の中心であった2).しかし,部位によって機能損失が大きいことや神経,血管周囲では再発リスクが高いことから,非手術的治療を第一選択とすることが増えてきた.欧米での保存的治療方針は経過観察(wait and see),薬物療法[抗エストロゲン薬,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)]を行い,腫瘍の増大,症状の増悪がみられた場合に,抗癌薬,分子標的治療薬,放射線療法が適宜選択される3).有効性の報告がある一方で,いずれも再発,副作用が問題となることが多く,施設間によって治療アルゴリズムが異なっていた.
近年,デスモイドの病態,組織像がケロイド,肥厚性瘢痕と類似していることに着目し,デスモイドに対するケロイド治療薬トラニラストの有効性に関する報告がある4).われわれは,背部デスモイドに対してトラニラスト,Cox-2阻害薬を用いて腫瘍の縮小を得た1例を経験したので,当院における治療方針とともに若干の文献的考察を加え報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2019