Japanese
English
骨・軟部腫瘍のマネジメント(その1) Ⅱ.診 断
2.組織・遺伝子診断
デスモイド型線維腫症の病理組織診断におけるピットフォール
-――CTNNB1遺伝子変異解析の有用性
Pitfall in histopathological diagnosis of desmoid-type fibromatosis:usefulness of CTNNB1 mutation analysis
酒井 智久
1
,
西田 佳弘
2
,
生田 国大
3
,
小池 宏
1
,
伊藤 鑑
1
,
今釜 史郎
1
T. Sakai
1
,
Y. Nishida
2
,
K. Ikuta
3
,
H. Koike
1
,
K. Ito
1
,
S. Imagama
1
1名古屋大学整形外科
2名古屋大学リハビリテーション科
3名古屋大学ゲノム医療センター
1Dept. of Orthop. Surg., Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya
キーワード:
desmoid-type fibromatosis
,
β-catenin
,
CTNNB1
,
mutation analysis
,
pathological diagnosis
Keyword:
desmoid-type fibromatosis
,
β-catenin
,
CTNNB1
,
mutation analysis
,
pathological diagnosis
pp.55-57
発行日 2021年4月20日
Published Date 2021/4/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei79_55
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は じ め に
デスモイド型線維腫症(desmoid-type fibromatosis:DF)は,世界保健機関(WHO)分類で良悪性中間型軟部腫瘍に属する(筋)線維芽細胞系腫瘍である.年間発症率は100万人あたり4例未満と報告されるまれな腫瘍である1).局所浸潤性が強く,広範切除術を行っても高い局所再発率が報告されている2~4).一方で,遠隔転移をきたすことはなく,また経過観察のみで自然に縮小する症例も存在する5).この特異的な挙動のため,現在DFに対する治療方針は従来の外科的切除から保存的治療を主体としたものへと変化しつつある6).
ほかの軟部腫瘍とは治療方針が異なるためDFの診断は正確に行われる必要があるが,病理組織学的診断が困難な症例も散見される7).免疫組織染色におけるβ-cateninの核内染色性が広く診断に用いられているが,DFでも核内染色が陽性とならない症例が存在する8,9).一方でDFの85~90%がβ-catenin遺伝子(CTNNB1)のホットスポットに変異をもつことが報告されており10,11),診断における変異解析の有用性が示唆されている.
本稿では,DFの診断におけるCTNNB1遺伝子変異解析の有用性を検討し,変異解析が臨床上有用であった症例とともに報告する.
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