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【要 旨】
目 的:術後の患者立脚型評価が良好といわれる安定性の高いmedial pivot型人工膝関節全置換術(TKA)であるが,その評価に影響しうる関節ギャップは明確にされてこなかった.特にデザインコンセプト上,膝関節内側の安定性が重要になる機種であり,適切な関節ギャップを明らかにすることは重要であると思われる.本研究では関節ギャップバランスと術後患者立脚型評価の関連性を明らかにすることを目的とした.
対象および方法:Medial pivot型TKAを用い手術を実施した769例の患者を対象とした後ろ向きコホート研究である.最終観察時に患者立脚型評価[Knee Society Score 2011(KSS-2011),Forgotten Joint Score 12(FJS-12),Self Reported Knee Instability(SRKI)],金粕撮影で屈曲関節ギャップを計測し,両者の関係を調べた.特に自覚的膝不安定感を示すSRKIのリスクを上昇させる閾値を検証した.
結 果:SRKIは177例(23%)の患者で陽性となり,これだけの割合の患者で術後膝不安定感を自覚することが明らかとなった.これらの患者では臨床スコア(KSS-2011,FJS-12)が軒並み不良であった.金粕撮影により得られた膝屈曲関節ギャップで関節ギャップの内側が外側より開くこと(内側関節面の弛緩)は,術後膝不安定感へのリスクとして検出された(オッズ比1.21,p<0.01).そしてその閾値は2.9°の内側面開大であることが算出された(感度29%,特異度91%).
結 論:術後の屈曲関節ギャップの過度な内側弛緩は,膝自覚的不安定感のリスクを高める可能性がある.そしてその閾値は2.9°であり,「屈曲位で関節面が約3°内側以上,外側より開いてしまっている状態」はあまりよくないという認識をもつことができる.せっかく術後の患者立脚型評価が良好であるとされるmedial pivot型TKAで,それを毀損してしまうのは避けたほうがよく,屈曲関節ギャップの内側が弛みすぎないように術者は注意したほうが無難ではないかと考える.
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