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は じ め に
整形外科領域の手術後は,凝固系活性化状態となる.松本ら1)は,D-Dimer,フィブリン分解産物(fibrin degradation product:FDP)値は術後一定期間高値となり,またPerrierら2)はドリリング,ボーンソーを使用し,骨を掘削することにより,D-Dimer,FDP値は長期間高値となると報告している.しかしD-Dimer値が,長期間高値であることで,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)における診断価値には値しない3,4).整形外科手術以外の領域においても,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)/肺血栓塞栓症(pulmonary embolism:PE),大量の胸・腹水,大血腫の吸収,悪性腫瘍,炎症により凝固系は亢進する.欧米ではPEなどの急性胸痛の診断にD-Dimer値測定が広く組み込まれている5).人工膝関節全置換術(TKA)術後においてC反応性蛋白(CRP)値陰転化に要する日数が遷延し,人工関節周囲感染(prosthetic joint infection:PJI)にいたらないために,抗生物質を長期間投与することが,日常の診療においてしばしば遭遇する.CRP値陰転化に術後長期間要し,またPJIにいたらなかった症例が散見される.CRP陰転化するまで抗生物質投与は,果たして患者にとっての無意味な治療ではなかったかと自問することがある.
本研究において,われわれは術後のD-Dimer値とFDP値が高値の症例において,CRP値陰転化が遷延化するという仮説をたてた.
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