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先進国を中心に生命寿命の延長,出生率の低下によって,世界的に高齢化が進行しています.本邦でも,2015年の統計では65歳以上の高齢者が女性29.5%,男性23.7%に達しました.本書の序文にも記載されていますが,日本脊椎脊髄病学会が実施している全国脊椎手術調査では,全脊椎手術に占める脊柱変形手術の割合が増加しており,この原因は変性や外傷をもとにした成人脊柱変形に対する外科的治療が原因と考えられます.そこで日本側彎症学会は,本症における病態の理解と治療の標準化を目的に本書の刊行を事業化しました.本書は,「Ⅰ章 総論」,「Ⅱ章 各論」から構成されており,各セッションには,はじめに “Point” が提示されているため,要点を整理しながら読みすすめることができます.最近の論文から最先端の知見を多く取り入れ,図や表を多用してわかりやすい記述になっています.詳しく知識を深めたい場合には,引用文献から簡単に重要な論文に到達できます.
総論は,治療の歴史,病態,診断・評価,治療から構成されています.本症は小児の脊柱変形後の遺残に中年期以降の変性が加わった変形と,小児期には変形がなく成人発症の加齢性変化による変性によって発生した変形(de novo),に大きく分けられます.歴史では,矯正固定法と使用された脊椎インストゥルメンテーションの変遷が紹介されています.病因については変性側弯症と矢状面グローバルアライメントに分類し,症例提示とともにわかりやすく解説されています.病態では,立位保持には頭部から脊椎,骨盤,下肢までのバランスの重要性や理想的な立位脊柱矢状面アライメント,骨盤パラメータ,立位姿勢維持のための代償機能について説明されています.さらに実際の臨床例に使用されるSRS-Schwab分類,脊椎および骨盤パラメータの計測や画像診断,基準値,民族間差,健康関連quality of life(QOL),歩行解析などについても多くのグラフや表を使用し,わかりやすい解説になっています.手術的治療を考慮すべき愁訴,日常生活動作(ADL),QOL,また固定範囲や術式決定について詳細に述べられており,症例提示によって手術計画の実際が示され,実践的でわかりやすい構成です.また手術に伴う麻酔や術後管理,合併症とその対策についても記載があります.
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