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成人脊柱変形(adult spinal deformity;ASD)は珍しい病気ではない。実際に60歳以上の世代では2人に1人は何らかの脊椎変形を有しており,高齢化社会に伴い発生率は上昇している1)。無論,大部分の人にとってはこれら変形の程度は軽く深刻な身体障害とはならないが,一部の変形は慢性かつ進行性となり生活の質や運動機能に重大な影響を与えうる。脊柱変形は原因と症状において多数の要素があり,他の整形外科的病態よりも診断が複雑である。変形性膝関節症に対する治療を求める患者においては,硬くて痛みを生じる膝を診察室で確認し,レントゲンを撮影すれば通常は診断が確定する。これに対してASDは原因,症候の面でより多様な疾患群であり,患者はさまざまな痛みや身体障害を経験する。そのため,この痛みと身体障害を区別することは重要である。まず,痛みは投薬加療や神経ブロックでも治療し得る。患者は治療により身体障害を生じるような痛みから解放され,機能も改善する。一方で,脊椎のアライメント(配列)やバランスの障害は必ずしも疼痛を誘発しないが,立位や歩行の継続を困難にし,関連筋の疲労と姿勢維持の破綻を招来する。痛みとアライメント不良,およびこの二者の合併によってしばしば患者はさらなる治療を必要とする。それゆえ,ASDの診断と治療方針の決定には疼痛のみならず,脊椎変形に関連する障害の進行を病歴からしっかりと確認することがきわめて重要となる。以下にその分類,原因と症候について解説する。「KEY WORDS」脊椎アライメント,SRS-Schwab分類,矢状面バランス,de novo変性側弯症, fixed sagittal imbalance(FSI)
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