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免疫療法剤の進歩に伴い,心臓移植は末期心不全患者の治療として臨床的位置を確立している。しかし,免疫療法剤の進歩にもかかわらず,急性拒絶反応は依然として心臓移植後1年以内の致死率にもっとも影響を及ぼす因子となっている1-3)。移植心の拒絶反応は,通常は組織学的には炎症細胞の浸潤と細胞壊死やアポトーシスを含む心筋細胞傷害壊死を伴う4,5)。さらにこれまでの研究から,心臓移植後遠隔期の合併症で生命予後に関与する移植心冠動脈病変(cardiac allograft vasculopathy;CAV)の発症に急性拒絶の有無が影響することが示されている5)。このように移植された心臓組織での炎症反応は,移植心の拒絶反応の進展に大きく関与していると考えられている。
Interleukin(IL)-1βは様々な免疫反応や炎症反応に関与する炎症性サイトカインの一つである6)。IL-1βやIL-18などの炎症性サイトカインは,動脈硬化や再狭窄の進展といった生体内の広範な免疫応答や炎症反応などを制御している。IL-1βはIFNγ,IL-5,IL-6などと同様に正常の心臓では低発現であるが,移植心においては同種同系移植においても同種異系移植においても,移植後の組織で発現の増加が認められている7,8)。また,IL-1βは適応免疫反応を促進することが知られており,周術期の虚血再灌流障害と同種免疫反応の増強を媒介することが知られている9,10)。さらには,IL-1βは虚血再灌流障害の際に生ずる急性炎症の進展に中心的な役割を果たし11,12),心移植後早期のalloantigen非依存性の炎症機転の重要なメディエーターの一つと考えられている13)。活性型のIL-1βやIL-18の産生には,インターロイキン変換酵素であるcaspase-1(またはIL-1β-converting enzyme;ICE)によるその前駆体のプロセシングが必要であり6),最近の研究ではcaspase-1がインフラマソーム(inflammasome)と名付けられたアダプター分子の多量体により活性化されていることが報告され,免疫学においてもインフラマソームの重要な役割が示されつつある14)。
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