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ナノテクノロジーは,物質をnm(ナノメートル)レベルで制御することにより,その物質の機能を飛躍的に向上させることを目的とした超微細加工技術であり,近年,広範な産業技術分野に革新的発展をもたらし得るテクノロジーとして脚光を浴びている。ナノテクノロジーを駆使して創製されるナノマテリアル(1次粒子径が100nm以下)は,従来までのサブミクロンサイズ以上の素材にはない有用機能を発揮し得ることから,工業用用途はもちろんのこと,化粧品基材・食品添加物として実用化されつつあり,次世代を担う新素材として期待されている1-4)。
一方で近年,ナノマテリアル特有の革新的機能が想定外の健康影響を発現してしまうことが懸念されている5-9)。特に生体に取り込まれた粒子状異物排除の根幹を担う免疫担当細胞がナノマテリアルを異物として認識した際に過剰反応や機能不全を起こす可能性が報告されており,ナノマテリアルが未知の免疫撹乱作用を呈する危険性が指摘されている7,8)。これらは,ナノマテリアルへの長期・多量曝露が炎症性疾患や自己免疫疾患,あるいは感染症罹患率の増大など予期せぬ毒性を引き起こす可能性を示している。このような背景のもと,ナノマテリアル産業発展のためにも,ナノマテリアルの安全性評価や安全なナノマテリアルの開発・実用化が急務となっているが,その体内動態・生体影響をはじめとする安全性情報は世界的にも乏しいのが現状である。したがって,ナノマテリアルを活用した豊かな社会の構築のためにも,今こそ,どの程度われわれはナノマテリアルに曝露されているのかといった曝露実態の解明や,生体内に取り込まれたナノマテリアルがどの程度組織に分布するのかといった定量的な体内動態評価,さらに,健康影響に及ぼす閾値追求など詳細な安全性評価が待望されている。
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