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私が研修医の時に指導医の先生から聞いた「整形外科医は骨折に始まって骨折に終わる」という言葉が今も忘れられない.私自身整形外科医として駆け出しの頃,本当に骨折の手術がしたくてたまらなかった.パート病院に休日まで当直に行ったのは,お金が欲しいというよりも症例が欲しかったためで,救急で来院して入院していただいた患者さんを,自分が出張で行く日に予定を組んでもらって手術をさせていただいた.その後関連病院に出向して一般整形外科を学んだ後に大学に戻り,手外科・マイクロサージャリーに関する実験,臨床に勤しんだ.おそらく多くの整形外科医は同じような道を歩んできたものと思っている.自分の専門分野に関しては大学できっちりとした指導を受けたが,骨折に関しては本を片手に(Depalmaの『図説 骨折・脱臼の管理』)骨折や脱臼を整復し,ギプスを巻いたものである.また直達牽引をかけたりシーネをあてがったりして,後日手術を行った.これらはほとんど関連病院やパート病院での症例であった.もちろん大学には骨折(外傷)グループなどなく,時々人工関節周辺骨折の症例や他科入院中発症の大腿骨近位部骨折を受傷して整形外科にコンサルトされた症例が術前のカンファレンスにかけられていたことが思い出される.
私自身はマイクロサージャリーが専門であったために,多くの偽関節,特に難治性偽関節の手術を奈良県立医科大学で行ってきた.そして7年前に20数年間勤務させていただいた大学病院から現在の市立奈良病院に異動することになった.その際考えたことは,一般病院に移るのであるから大学ではあまりできなかった骨折を中心とした四肢外傷をメインに治療し,加えて若い先生たちに対して新鮮外傷の教育をしっかり行える施設を作るということであった.そして7年間かけてようやく四肢外傷センターを整形外科から独立させてERセンターに組み込むことができた.
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