特集 好きになる呼吸器学―珠玉の症例集から
珠玉の症例集 ~印象深い症例・思い出の症例より~
[Case 9]自己免疫性肺胞蛋白症に全身症状が出現
-関連なさそうで,実は関連がある?
新井 徹
1
1国立病院機構近畿中央呼吸器センター 臨床研究センター呼吸不全研究部
キーワード:
抗GM-CSF自己抗体
,
自己免疫性肺胞蛋白症
,
サルコイドーシス
,
マクロファージ機能
Keyword:
抗GM-CSF自己抗体
,
自己免疫性肺胞蛋白症
,
サルコイドーシス
,
マクロファージ機能
pp.897-901
発行日 2022年11月1日
Published Date 2022/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika130_897
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肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis:PAP)は,過剰なサーファクタントからなる無構造蛋白物質が肺胞腔内に貯留し,呼吸不全が進行する原因不明の疾患である1~3).抗顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor:GM-CSF)自己抗体陽性を示す自己免疫性肺胞蛋白症(autoimmune PAP:APAP)が90%程度を占める2,3).この抗体の存在により,サーファクタントの代謝に重要な役割を示す肺胞マクロファージの分化抑制,機能低下を呈し,サーファクタントの貯留をきたすことがAPAPの病態と考えられる3).また,この病態からGM-CSFの治療応用が検討され,近年,ランダム化比較試験によってGM-CSF吸入療法の有効性が証明されるに至った4).
APAPは肺野にすりガラス陰影(ground glass opacity:GGO)を呈するため,GGOを呈する他疾患を合併した場合,とくに診断が困難となる.その場合,時として疾患によって重要となるのは肺外の身体所見である.今回われわれは,APAPで10年以上診療を継続しているなかで,サルコイドーシスが続発した症例を経験した5).本症例を経験した時点では,両者の合併例の報告はなく,肺以外の自覚症状と身体所見が診断のきっかけとなった.さらに,本症例の臨床経過を検討することで,APAPとサルコイドーシス合併について病態の考察を行った5).以下にお示ししたい.
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